Tuesday, March 26, 2013

ドイツ緑の党の候補者リスト選挙

 筆者は1990年に初めてドイツを訪れて以来、ドイツとは縁が切れない関係となった。最初は哲学の文献調査でドイツの各大学を回ったが、それから関連の学会や研究会に招かれたり、いろいろ交流を持つうちに、ドイツの市民運動や緑の党の運動に魅せられ、引き込まれていった。

 ドイツの緑の党大会に最初に参加したのが2002年。それからほぼドイツを訪れるたびに、緑の党主催のイベントやキャンペーン、討論会に参加してきた。ドイツ在住の日本人で緑の党員になっている人たちも何名か知っているが、私の場合は日本およびアジアの緑の運動を代表する立場で参加してきたため、この十数年間で実に多くの党員と交流でき、ひときわ厚遇を受けてきたのではないかと思っている。とりわけ最近では連邦(国)レベルではなく、ドイツの各州、各都市で活動する緑の党の活動に関心を持つようになり、数多くの地域の党員や活動家と交流を深めるようになった。 

 さて、今年2013年は、4年に1度行われるドイツの連邦議会議員選挙(国会議員選挙)の年である。投票日は9月22日(日曜日)であるが、早くも各政党は比例区・選挙区の各候補者を選出し、選挙に備えて対策を始めている。緑の党も各州ごとに連邦議会議員に出るための比例区候補者リストをつくるため、今年に入ってから州ごとの党大会で候補者を選ぶ選挙が行われている。
 
                                          緑の党ノルトライン・ヴェストファーレン州(NRW州)
                   党大会での候補者リスト当選者たち               
                  
 ドイツ緑の党の候補者選びはユニークで全員参加、民主的に運営される。候補者は中央執行部や委員会から指示され任命を受けるのではなく、全員が地方での党員選挙で選ばれる。立候補にあたっても、まずリスト1位から女性、2位には男性、3位は女性・・・というように、男女がそれぞれ入れ替わりでノミネートされる。そして立候補したい党員は、自分がリストの何位に立候補するかを選ぶ。

 比例区の場合、候補者選挙は党大会の場で、リスト1位から全員投票により即時開票され決定する。各順位のポジションごとに立候補者が全員登壇して短いスピーチを競い合い、それを聴いた党員たちが判断して投票する仕組みである。ただし投票結果の1位が過半数に達しない場合は、候補者のだれかが過半数に達するまで決選投票を繰り返す。その過程でリタイアする候補者も生じ、最終的に絞られた中で過半数の票を得た候補者が当選する。リタイアした候補者は、次の(男女別で2位下の)順位リストに繰り下がりで立候補することもできる。

 以下ではハンブルク州とベルリン州の緑の党の事例を紹介する。

   ハンブルク州では、2月24日に緑の党州大会が行われ、リスト7位までの比例区候補が即時開票され決定した。リスト1位にノミネートしたアンニャ・ハジュクAnja Hajduk、リスト2位にノミネートしたマヌエル・ザラツィンManuel Sarrazinは、圧倒多数の得票で自動的に当選を果たした。リスト3位には若年世代(ヤング・グリーン)を代表して党州共同代表で州議会議員のカタリーナ・フェゲバンクKatharina Fegebankが177票中、151票の圧倒多数を得て当選。
 
                                          リスト候補3位の演説をする、カタリーナ・フェゲバンク
                                           Katharina Fegebank  (緑の党ハンブルク州共同代表)
                                           
 
 ここまではすんなりと決まったが、リスト第4位は、マクシミリアン・ビアバウムMaximilian Bierbaumと、党州共同代表のアニェス・チャルクスAnjes Tjarks、ユズフ・ウズムグムYusuf Uzumgumの3名が激突し、ビアバウムが75票、アニェスが64票、ユズフが17票で、ビアバウムとアニャスとの決選投票となった。結果、ビアバウムが75票、アニャスが58票となり、過半数を獲得したビアバウムが当選した。

 リスト第5位は、圧倒多数でアンナ・ガリーナAnna Gallina氏が当選。先に決選投票で敗れたアニャスはリスト6位に再立候補して当選。リスト7位には元党連邦中央委員でハンブルク市議会議員のカーティア・フーゼンKatja Husenが当選した。

 
 


ベルリン州では、2月16日の緑の党州大会で、リスト5位までが決定。リスト1位に立候補した元農業・消費者大臣のレナーテ・キュナスト Renate Künast が73.9%にあたる596票を得て文句なしの当選。リスト2位にはエズカン・ムトルOezcan Mutluが418票(47.6%)、アンドレアス・オットーAndreas Otto が406票(46.2%)となったため決選投票となり、再投票でエズカンが556票(63.3%)を獲得して当選。

リスト3位には現職連邦議会議員のリサ・パウスLisa Paus、ユリア・バウアーJulia Bauerの2名が立候補したが、リサ・パウスが641票(82.6%)の圧倒多数で当選。先にリスト2位で敗れたオットーがリスト4位に再立候補し、ヤング・グリーン代表のシュテファン・ツィラー Stefan Zillarの356票(44.2%)を退けて、439票(54.5%)の過半数を獲得して当選した。
 
 

 リスト5位には、ベルリンのクロイツベルク地区議員で元ヤング・グリーン代表のパウラ・リースター Paula Riester、ニーナ・シュタール Nina Stahr、アストリッド・シュナイダー Astrid Schneiderの3名が立候補したが、パウラが移民差別撤廃政策を訴える見事なスピーチで圧倒して当選(382票、55%)を果たした。ニーナは200票(28.8%)、アストリッドは87票(12.5%)で及ばなかった。

 


 ちなみに上記以外の州でも、連邦議会議員の候補者リストのための選挙が随時実施された。なおフランクフルトやヴィースバーデンなどの大都市を抱えるヘッセン州、ミュンヘンのあるバイエルン州は連邦議会総選挙の1週間前(9月15日)に州議会議員選挙が実施されるため、州議会リスト候補者も随時選出された。こちらも私の友人たちがリスト(比例区)候補にノミネートされたり、小選挙区の候補(Direktkandidaten)に選ばれたりと、大健闘していた。立場上彼女ら、彼らを応援しないわけにはいかない。

 



 
 
 バイエルン州議会議員候補者リスト5位に選ばれた
カタリーナ・シュルツェ Katharina Schulze(23歳・ヤンググリーン出身)
 

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